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一問一答 よろず相談
歯磨きを嫌がる
認知症の父
認知症の父親を介護しています。症状が進行し、身の回りのこともすべてに介助が必要になってきました。父は10本近く自分の歯が残っているので歯磨きしようとするのですが、すごく嫌がってしまい、なかなかやらせてもらえません。無理に押さえつけてブラシを入れようとしても口を強く結んでしまいます。どうすればよいでしょうか。
(千葉県 NKさん 62歳)
一問一答 よろず相談 【答える人】
五島朋幸 先生

(歯科医・ふれあい歯科ごとう院長)
地域の訪問歯科医として活躍中。口腔ケアの普及啓発にも力を注いでいる
◆ホームページ:「地域ケアを実践する ふれあい歯科ごとう」
歯磨き=イヤなことと
思わせない工夫を


  このような質問は本当に良く受けます。老人ホームを訪問して口腔ケアをすることがあるのですが、何人かには強く拒否されてしまいます。僕たちが行けばスムーズに口腔ケアができるなどという魔法の技はありません。そこで、簡単な脳の原理を知っておいていただくと対応しやすいかもしれません。

  脳の中で、記憶をつかさどる部位を海馬(かいば)と呼びます。最近は脳ブームですから聞いたことがあるかもしれませんね。そして、「好きなこと」を感知する扁桃体(へんとうたい)という部分があります。この扁桃体と海馬には相関関係があるといわれています。ご存知のように「好きこそものの上手なれ」です。

  認知症というのは記憶力の低下、つまり海馬の機能の低下です。歯ブラシを口の中に入れようとして強く抵抗されたからといってもその記憶は長くは続きません。しかし、扁桃体で感じる「好きなこと」「嫌いなこと」は体に残ります。

  そこで口腔ケアに戻りましょう。一番重要なことは、歯磨きを「嫌いなこと」と感じさせないようにすることです。押さえつけて無理やり1回歯磨きできたとしても、その方の生活が変わるわけではありません。それよりも「歯磨きは気持ちいい」と感じてもらえるようにすれば、口腔ケア自体を好きになってくれるかもしれません。口腔ケアが好きになって歯磨きをしようとするとニコニコと口を開けてくださる、そんな状況になると良いですね。

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「一問一答 よろず相談」は、『かいごの学校』(現在、休刊中)より掲載したものです。