総評(2015(平成27年)度・第18回試験を振り返って)

 2015(平成27)年度介護支援専門員実務研修受講試験は第18回を迎え、本年10月11日(日曜日)に、例年より2週間ほど早く、予定通りに実施された。
 受験に際しての保有資格による「受験科目免除の取扱い」が廃止され、全員が全60問を受験する最初の年であり、2014(平成26)年の介護保険法改正、2015(平成27)年4月および8月の同改正法の施行、介護報酬の改訂実施、さらに、本試験問題の出題準拠とされる(財)長寿社会開発センターの介護支援専門員基本テキストも、3年ぶりに改訂版として「七訂基本テキスト」が発行されたことを受け、本年度試験がどのような内容になり、あるいは、どのように様変わりするのか様々な憶測が流れ、関心が高まった中での試験だった。

 全体的な印象としては、これまでの出題形態との大きな変化はなかったが、選択肢文がより短文化しており、その結果として、従前よりも読み取り力と、5つの選択肢間の比較衡量力、あるいは選別眼力が求められていると感じられた。
 制度の大きな変革と、新制度への移行過程にある年度の試験として、出題者のご苦労の跡が反映している(見受けられる)とも言えるだろう。
 また、受験科目免除の取扱いがなくなったが、これまで通り、保健医療サービスの知識を問う分野について、「基礎」(15問)と「総合」(5問)に分別し出題されており、来る12月の合格発表にあって「総合」の得点が、合否にどのような影響を及ぼすか大きな関心のあるところである。
 以下、出題分野ごとに分析・論評してみたい。

介護支援分野

 介護支援分野(問題1から問題25)の出題内容および出題順に関しては、ほぼ例年通りで、大きな変更はなかったと言える。
 予想通り、介護予防・日常生活支援総合事業(新しい総合事業)を中心に、「地域支援事業」に関する出題が多かった。
 反面、「地域包括ケアシステムの全体像、あるいは詳細」やその準拠法である「医療介護総合確保推進法」について単独問題での出題はなかった。
 もとより、第1問で、市町村が地域支援事業に加え、第1号被保険者の保険料を財源に、条例で定めて実施できる「(市町村)保健福祉事業」を問うたのには、面喰った受験者も少なくなかっただろう。この出題に関しては、新版の七訂基本テキストではなく、旧版の六訂基本テキスト第1巻174頁で解説され、新版を購入していない受験者への配慮かと穿ってみてしまった。
 要介護等認定については、認定調査票や主治医意見書の構成内容を問うものなど、過去にも出題があったため、過去問ベースで学習していた受験者には「サービス問題」であっただろう。
 問題21(通所介護事業者の人員基準)については、少々虚を突かれた感じを受け、唯一難問と感じられたが、療養通所介護の出題可能性は予想の範囲であったので、逆に易しいと思われた方もいただろう。
 最後に問題5(介護予防・日常生活支援総合事業)について、不適切問題ではないかとする意見があったので解説を少し。
 介護予防・日常生活支援総合事業は、1.介護予防・生活支援サービス事業と2.一般介護予防事業で構成されている。
 1.介護予防・生活支援サービス事業の「その他の生活支援サービス」には、現行、第1号生活支援事業(法第115号の45第1項第1号ハ)しか規定されず、第2号生活支援事業は存在しないため選択肢5は誤り(×)。
 2.一般介護予防事業は、「第1号被保険者に対し体操教室などの介護予防を行う」ため、選択肢4を正しい(○)とする(長寿版七訂基本テキスト第1巻181頁、182頁)。選択肢4で「要介護の…」としているために介護給付の対象者となり、この問題を不適切とする意見もあるが、「要介護の」は介護を要する状態であり、「認定を受けている」(要介護度)の記述がない以上、第1号被保険者としての利用を妨げないと解釈し、予想解答を3と4としている。

保健医療サービスの知識等

 保健医療サービスの知識等について、「基礎」(問題26から問題40)と「総合」(問題41から問題45)の出題内容の振り分けは、概ね例年通りと解釈できた。
 両分野合わせて全20問の出題内容の傾向としては、保険給付対象の保健医療系サービスに関するものが、訪問看護、居宅療養管理指導、短期入所療養介護、介護老人保健施設を含め介護保険施設が各1問と、例年より少ない印象を受けた。問題45の居宅療養管理指導は、地域包括ケアシステムが強化している医療との連携においてその中心となるもので、特に居宅療養管理指導を提供する医師等の役割や期待につき、ケアマネジメントとの関連を問うものは予想通りであり、介護支援分野でも問題20で出題しており、次年度以降も、在宅介護の支援サービスとして、訪問看護とともに出題が継続する兆しが見えた。
 その他、栄養管理(低栄養対応)、薬剤管理、在宅医療管理(胃ろう、在宅自己注射等)、感染とその予防、褥瘡・口腔・排泄など介護に関する基礎知識、リハビリテーションなど、定番的な出題であり、その内容も過去出題レベルにあり、しっかり基礎的な知識を身に付けていれば、十分に対応可能であったと思う。
 予防重視の観点から「健康日本21」(第二次)、認知症患者の増加に対応する観点から「認知症の療法等」や「新オレンジプラン」などの国の施策の詳細についての出題を予想していたが、今回は見送られたようだ。
 問題42(訪問看護)に関しては見解が分かれる。
 選択肢1は「訪問看護が24時間365日の対応が求められている」ことから正しい(○)ともとれるが、運営基準上の「義務」ではなく、「24時間」報酬算定に関連して体制の設定を義務付ける規定もないため誤り(×)ともとれる。
 選択肢2は、認知症対応型グループホーム入居者は、急性増悪時に医療保険で訪問看護を利用できる正しい(○)が、介護保険では原則利用できず誤り(×)ととれる。
 設問の設定が厳密でないため解釈に迷うが、選択肢1の「義務」を誤りと考え、解答を2と5としたいと思料する。

福祉サービスの知識等

 福祉サービスの知識等(問題46から問題60)も、概ね例年通りの出題内容かつ出題順であった。
 問題48では、七訂基本テキストで登場した「メゾ・ソーシャルワーク」(集団援助)という用語での出題があり、新版購入者への配慮が見受けられたが、出題内容は「集団援助技術」に係る過去問レベルで、十分に対応可能であったと思う。
 なお、保険給付対象の福祉系サービスの出題内容は、既出のものばかりで、定期巡回・随時対応型訪問介護看護や看護小規模多機能型居宅介護(なお、後者は当初より、小規模多機能型居宅介護に関する出題が必至であるから、同時出題はないと予想していたが)に関する出題がなかったのは、未だ開設事業者数が少ないことへの配慮と推察した。次年度試験では、出題の中心となるであろう。
 問題54(介護保険における福祉用具)は2015(平成27)年4月からの変更・追加内容につき解説を少し。予想解答は1、3、4。
 選択肢2「水洗ポータブルトイレの設置に要する費用は、給付対象となる。」は、水洗ポータブルトイレが特定福祉用具として購入対象に本年4月に追加されたことを受けての出題だが、「設置に要する費用」、即ち「住宅改修費」を問うものとして、選択肢文が短文であるが故に、あまり感心できない選択肢(所謂、ひっかけ)と感じた。
 選択肢4については、「2015(平成27)年度より、福祉用具貸与の給付の効率・適正化の観点から、事業者があらかじめ都道府県等に減額の規定を届け出ることにより、特殊寝台など複数の福祉用具を一体的に貸与する場合、通常の貸与価格から減額して貸与できる」こととなっているので正しい(○)となる。
 選択肢5では自動排泄処理装置の専用パッドや洗浄液は、その都度消費する消耗品は、保険給付の対象でなく(よって、選択肢の特定福祉用具販売の対象でもない)、利用者が自費で購入するものであるから、選択肢5は誤り(×)である(長寿版七訂基本テキスト第2巻266頁、268頁)。

結論として

 法改正、制度改正、報酬改定に関する出題への思惑(疑心暗鬼)の部分は、肩透かしを喰った感じで、地道に過去問を解き、新制度の概要を学習し、落ち着いて解答すれば例年並みの合格ラインで合格できるレベルであったと考える。
 毎度、法改正等の行われた年度にありがちな、変更点の確認や情報収集に血道を挙げて、基本的な事項の学習を疎かにしていた場合、難問に感じることとなったと予想される。反面、例年通りの学習方法に徹し、基礎・基本を押さえていた方には、比較的易しいと感じたのではないだろうか。
 ただし、周知期間が経過した次年度試験では、新制度、移行後の変更点などの出題が増えると考えるべきであろう。また、本年度試験では影を潜めた「虐待とその防止」については、近時、施設等での高齢者虐待事件が顕著であること等から鑑みて、次年度試験ではまた大きく出題されると予想している。
 とはいえ、本年度試験も決して容易に合格ラインを超えられるほど安易なものではなかった。
 しっかり学習し、準備された方のみに合格の栄冠が輝くと思われる。一人でも多くの読者が合格されたことを心より祈念する。

日本医療企画ケアマネ書籍監修
野島 正典

2015(平成27)年度介護支援専門員実務研修受講試験 予想解答

2015(平成27)年10月11日(日)実施

問題番号予想解答問題番号予想解答
介護支援分野311 2 4
1 2 5322 4 5
1 3331 3 5
1 2 3341 4 5
2 4 5351 2 5
3 4361 4 5
1 2 4371 2 4
4 5382 3 4
2 3 4391 2 3
2 3 5402 4
102 3保健医療サービスの知識等(総合)
111 3 4411 3 5
121 3422 5
132 4432 4 5
142 4 5441 3 5
152 4 5451 2 4
161 2 3福祉サービスの知識等
171 2 4461 3 4
182 4 5471 2 4
191 3 4484 5
202 3 5491 2 3
211 3 5503 4
224 5514 5
233 5522 4 5
243 4 5531 2 5
251 2 5541 3 4
保健医療サービスの知識等(基礎)553 4
261 2 5563 4
271 3 5572 4 5
281 4583 4
291 4 5591 4 5
301 2 5601 2 5

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