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    Case2 業務改善
     
      管理栄養士・栄養士のみなさんが日ごろの業務のなかで悩んでいることについて、ベテラン管理栄養士からアドバイスをしていただきます。

    食事を食べてくれない利用者さんの本音を知りたい
    あまり食べてもらえない利用者さんに「食事はいかがですか?」と聞いても、「いつもありがとうございます」と遠慮がちに言うだけです。 利用者さんの本音を理解するには、どうしたらよいでしょうか?(管理栄養士)
     


    五感をフル回転させて言動から気持ちを推測する
    本音を引き出すスキルというものはありません。 人と真剣に向き合うことで見えてくるものだと思います。 人間の尊厳を大切にしながら、「どう支援したら、利用者さんは、もっと幸せな生活をおくれるのだろうか」を常に考え、実行していくことが介護に携わる者に求められます。

       まずは、言動のなかから本音を探りましょう。「お加減はいかがですか?」と話しを切り出して、話題を広げてください。また、食事を食べたり、拒否したりするといった行動もよく観察し、その理由を考えてみます。そこに利用者さんの気持ちを理解するヒントがあるはずです。"ヒント"を見逃さないためには、感性磨きが欠かせません。

       私が看護学校に通っていたとき、実習先の看護師長に「五感を研ぎ澄まし、想像力を働かせなさい」と言われました。ご本人が望むケアを提供するには、利用者さんがどういう気持ちでいるかを慮ることが必要なんです。感性磨きを叩き込まれた私は、休みの日に買い物で街に出たとき、道行く人を眺めながら「何であんな行動をとるんだろう」と、つい考えてしまうほどです。

       最近、介護スタッフの想像力の豊かさに感心したことがありました。食べようとしない利用者さんに「○○さんにお手紙が来ていますよ『私は、京都にある古いお寺のお坊さんです。○○さんがご飯を食べないと聞き、とても心配になって手紙を書きました。お身体のためにも、ちゃんと食べてくださいね』ですって」と食事の前に手紙を読んだのです。これは、スタッフがお坊さんになりきって書いたもの。利用者さんが京都出身で、寺院めぐりを趣味にしていたということを、会話のなかから引き出して考えたそうです。この利用者さんは昔の楽しい思い出がよみがえったのか、いつもよりたくさん食べてくれました。業務内で利用者さんのために何かすることは、時間や根気が求められるので難しいかもしれません。介護の仕事を誇りに思って取り組む姿勢、利用者さんに対する思いやりがなければできないと思います。

       「どうしたら、食べてもらえるのか」に答えはありません。職種を問わず、スタッフ一人ひとりの感性や想像力を寄せ集め、いろいろなことを試しながら解決していくことです。

    (回答者:土肥住江さん 社会福祉法人葛飾会特別養護老人ホームかつしか苑 管理栄養士・介護支援専門員)