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      管理栄養士・栄養士のみなさんが日ごろの業務のなかで悩んでいることについて、ベテラン管理栄養士からアドバイスをしていただきます 。

    管理栄養士をもう1人増やしたいのですが・・・
    栄養管理実施加算が創設され、もう1人、管理栄養士を増やしても、収益は十分に出るということを事務長に文書で提出し、 増員を要求したのですが、「病院の収益は、各部署の赤字、黒字が問題ではない」と取り合ってもらえませんでした。 どう説明したら、人員増につなげられるのでしょうか?(病院管理栄養士)
     

     増員を考える前に、お金について改めて考えてみてはいかがでしょうか。 お金は他人に益する何かをした対価として生まれてくるものです。漠然と、業務に追われて手に負えないから、 増員してほしいとか、お金がこれだけ余っているからもう1人雇えるというのでは経営陣を説得することは難しいように思います。 そうではなく、管理栄養士を増やしたことで、今できていないことができるようになり、 より多くのお金を稼げるということを提案しなければならないでしょう。

     平成18年度の診療報酬改定により、100床に1人の栄養士が十分に雇える環境は整備されましたので、 増やした管理栄養士がどれだけのお金を生み出すのかを明確に示すのです。そのためには、 まず、自らの意識改革が必要です。管理栄養士は、病院のなかで稼ぐために存在するのだという意識を強くもたなければなりません。 たとえば、管理栄養士は、入院中の患者さんのベットサイドに行って15分以上の栄養指導をすることで130点もらえます。 つまり1,300円稼げるのだと自覚してください。これは、管理栄養士というライセンスをもっているがゆえにできることなのです。

     次に、時代や社会の動き、病院の特徴や地域の状況をよく見ながら、どうしたらお金を生み出せるのかを考えることが大切です。 福祉施設や在宅介護支援センターを併設している病院の場合、管理栄養士がもう1人いれば、院内業務を任せることができ、 自分は病院の外へ蕫営業﨟に出て、栄養管理が必要な人たちを探し出し、栄養指導ができるという提案も思いつくでしょう。 病院での栄養食事指導料は130点ですが、在宅患者訪問栄養食事指導料は530点もとれるのです。 また、4月からは特定健診・特定保健指導がはじまり、管理栄養士の活躍がますます期待されています。 「アウトソーシングしなくても、もう1人いれば対応できます」と言えるかもしれません。 時代の流れのなかで、管理栄養士が必要とされている部分を敏感に感じ取り、増員により管理栄養士ができることを提案し、 「この資格をもっていなければ取れない点数を取ります」とぜひ申し出てみてください。

     しかし、お金を生みだす企画を考えて、経営陣に提案しても、その案がすぐにとおることは難しいかもしれません。 事前の蕫根回し﨟もしてください。病院は企業でもあるので、一般の会社と同様、企画をとおすには各部署へ根回しをして、 賛成してもらえるようにすることが必要です。

     院内で協力体制を築くには、時間がかかります。そのために、常日頃からの院内コミュニケーションは欠かせません。 たとえば、病棟や医事課に出て、患者さんの食費の支払状況をこまめに確認すれば、 栄養科はコスト管理の意識が高いということが周囲の人たちにも理解されるでしょう。 栄養科の考えや仕事を職員にアピールすることで信頼関係が築かれ、根回しもしやすくなります。

     管理栄養士の増員につなげるための提案は、まず何のために必要な管理栄養士なのかということをしっかり考えることです。 そして、院内で支援してくれる人を見つける。もちろん、お金を稼ぐことだけに埋没してはいけません。 在宅での栄養指導を始めることや特定保健指導に取り組むことなど、新しいことをはじめるというのは、 より多くの人の健康を守ることでもあります。管理栄養士が稼ぐことは、病院の収益が上がるだけではなく、 より多くの患者さんのQOL向上につながるということを忘れてはなりません。

    (回答者:龍崎桂子さん 社会福祉法人日本医療伝道会 衣笠病院医療技術部栄養科室長)