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医療経営士の育成をめざす
外部環境が次々と変遷する厳しい経営環境の中、医療の質、安全性、患者満足度を高めながら、経営の効率化を図るために、医療機関には経営力の向上が求められている。 この医療と経営の質の向上という二律相反する課題に取り組むためには、病院全体をマネジメントできる経営意思・知識を持つ人材が欠かせない。
そこで来春30周年を迎える株式会社日本医療企画では、これまで培ってきたノウハウをもとに、経営意識・知識を持った人材の育成・養成を目的とした『医療経営士テキストシリーズ』を発行する。 総監修者である川渕孝一氏から、同シリーズのねらいについて伺った。
  
経営「人財」養成をめざしテキストブック開発に着手
   私がある民間病院に入職した1983年 は、国民医療費の伸び率が大きくダウン し、病院冬の時代と言われた時期である。 病院は医療サービスを分業による協業で 持続的に提供している組織体である以 上、本来、何らかのマネジメントを行う必 要がある。しかし、入職してみると、およ そマネジメントと言えるものはまったくな かった。そこにあったのは医師を頂点と するピラミッド型に階層分けされた専門職 を中心とする組織体系であった。

   マネジメントとは個人が単独では成しえ ない結果を達成するために他人の活動を 調整する行動、つまり他人を動かすこと である。病院にマネジメントがないというこ とは、コンサートマスターのいないオーケ ストラ、参謀のいない軍隊のようなもので ある。

   日本の医療機関は、収入の大半を保 険診療で得ているため、経営層はどうし ても「診療報酬をいかに算定するか」「制 度改革の行方はどうなるのか」という面に 関心が行ってしまうのは仕方ない。しか し現在、医療機関に求められている「医 療費は節約されるにもかかわらず、医療 の質や患者満足度はさらなる向上」といっ た二律相反する2つの要素を満たすため には、医療と経営の質の両面を理解した うえで病院全体をマネジメントしていくこと が不可欠である。

   医療経営の分野においては近年、医 療マーケティングやバランスト・スコアカー ド、リエンジニアリング、ペイ・フォー・パ フォーマンスといった経営手法が脚光を 浴びてきた面があるが、実際の現場に根 づいているかと言えば、必ずしもそうでは ない。その大きな原因は、医療経営に携 わる職員がマネジメントの基礎となる知識 を背景に持っていないことだ。 もっとも病院マネジメントは、科学であ るにもかかわらず、理論や手法に関する 学問体系の整備は遅れていたため、病 院関係者が実践に則した形で学ぶことが できる環境がほとんどなかったことも事実 である。

   こうした病院マネジメントを実践的かつ 体系的に学べるテキストブックの必要性を 感じ、現在、総監修者として制作にあたっ ているのが『医療経営士テキストシリー ズ』である。めざすのは、病院経営に必 要な知識を持ち、病院全体をマネジメント していける「人財」の養成だ。
  
体系的に整備された実践重視のカリキュラム
   『医療経営士テキストシリーズ』の特徴 は、初学者が医療制度や行政の仕組み から不可欠な倫理までベースとなる基礎 を学べる初級編、医療マーケティングや 経営戦略、組織改革、財務・会計、物 品管理、医療IT、チーム力、リーダーシッ プなど、「ヒト・モノ・カネ・情報」の側面 からマネジメントに不可欠な知識を整理し た中級編、各種マネジメントツールの活用 から保険外事業まで病院トップや経営参 謀を務めるスタッフに必須となる事案を網 羅した上級編と段階を踏みながら、必要 な知識を体系的に学べるように構成され ていることだ。

   テキストの編著者は病院経営の第一線 で活躍している方々である。そのため、 内容はすべて実践に資するものとなって いる。病院マネジメントを体系的にマスター していくために、ぜひ初級編から入り、 中級編、上級編とステップアップしていっ ていただきたい。

   病院マネジメントは知見が蓄積されてい くにつれ、日々進歩していく科学であるた め、テキストブックを利用した独学だけで はすべてをフォローできない面もあるだろ う。そのためテキストブックは改訂やライン アップを増やすなど、日々進化させていく ことはもとより、執筆者とマネジメントを学 ぶ者同士が集まって、双方向のコミュニ ケーションを行える検討会や研究会といっ た「場」を設置していくことも必要であろ う。テキストブックの制作はあくまでもスター トにすぎない。

   『医療経営士テキストシリーズ』は、病院 事務職はもとより、ミドルマネジャー、トッ プマネジャーの方々に使っていただき、得 たことを現場で実践してもらえればと思う。 そうすることで1人でも多くの病院経営を 担う「人財」が育ち、その結果、医療機 関の経営の質、日本の医療全体の質が 高まることを切に願っている。
※『フェイズ・スリー』2010 年2月号より抜粋
  
川渕孝一氏 かわぶち・こういち
1959年生まれ。83年、一橋大学商学部卒業後、民間病院を経て86年、シカゴ大学経営大学院でMBA取得。 国立医療・病院管理研究所、国立社会保障・人口問題研究所勤務、日本福祉大学経済学部教授、日医総研主席研究員などを経て、東京医科歯科大学大学院教授、経済産業研究所ファカルティ・フェロー(現職)。 主な研究テーマは医療経済、医療政策など。 『第五次医療法改正のポイントと対応戦略60』『病院の品格』(日本医療企画)、『医療改革~痛みを感じない制度設計を~』(東洋経済新報社)など著書多数。
  
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