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インタビュー&リポート
 
 

勝又 健一 氏
(株式会社Dプラス代表取締役)

   今回は、医師専門のエージェントである勝又健一氏に、麻酔科医についてインタビューした。 勝又氏は、株式会社メディカル・プリンシプル社「民間医局」の創業メンバーとして参画、『DOCTOR'S MAGAZINE』初代編集長を務め、 麻酔科プロジェクトを立ち上げてきた。 独立した現在、麻酔科医に強みを持つエージェントとして、今、麻酔科医の動向を日本で一番よく知ると言われる人物である。

――麻酔科医が大挙して大学病院や市中病院から抜けるという時期がありました。それはどういった理由が大きかったのでしょうか。

  病院において麻酔科をきちんと運営していくには、麻酔科医の頭数が必要になります。しかし、卒後臨床研修の義務化により若手が引きはがされ、中堅の麻酔科医たちは過重労働によって、現実的に体が動かなくなってしまいました。これが、大学医局や病院を離れていった一番の原因だと言えます。
   また、それまで麻酔科医自身、麻酔科医としての存在意義や価値を見いだせない状況もあったように感じます。患者とは接点が少なく、患者は「麻酔科医って医者なの?」という認識。チームで手術を行う外科医は、麻酔科医を使うという意識や行動があり、麻酔科医は疲弊していきました。
   麻酔科医の世界では、先駆者として、訪問診療的な麻酔科開業の先生がいらっしゃいましたが、それはポピュラーなものではありませんでした。10年ほど前、フリーの麻酔科医集団である東京麻酔グループが誕生し、フリーという働き方が注目され始めたのです。しかし、麻酔科常勤先や非常勤先の情報は、大学がすべて握ってきましたし、医師紹介業者も麻酔科分野には手を出さずにきていました。私は、東京麻酔グループと接点を持つことで、エージェントとして麻酔科分野に深くかかわるようになりました。当時、実際にフリーになって働きたいという麻酔科医は、病院勤務の中で体を壊す、育児等家庭の事情で常勤はできない、組織になじめないといった人たちが主流でした。
   フリーの先生方の中には、年収3,000~4,000万円(税込)を得ている人もいます。その噂を耳にして、自分も何とかなると甘い期待を抱いてフリー志向を持つ勤務医の人が増えたと言えます。勤務医である自分の現実の姿と比較し、隣の芝生の青さだけが目についたのです。

――そうした状況が生まれ、その後揺り戻しのようなことが起こっていると聞きましたがどうなのでしょうか。

  フリーに対するイメージについて麻酔科勤務医に尋ねると、「お金が稼げる」「自由な時間がとれる」ということを必ず答えます。認識の甘さがそこにはあります。フリーは厳しい世界です。一度仕事を断れば、次から絶対に仕事はきません。単価自体を考えてみても、1回のオペで平均5万円として、4,000万円得るには、年間800症例です。それだけの症例数をこなすことは、勤務医では、そう多くあることではありません。つまり、お金と自由な時間の両方を手にすることは不可能なのです。一度フリーになってみて、人間関係やリスクに対するストレスという現実を突きつけられると、自分がどこにスタンスを置くのがベターなのか見えてきます。稼ぎたいのか、収入は減っても自由時間がほしいのか、安定収入でいきたいのか・・・。いろいろ考えた結果、自分に一番マッチした勤務形態を選びます。さらに、外科医も麻酔科医とのパートナーシップが重要という認識に変化してきたので、病院内で麻酔科医としての自負心も取り戻せる環境もできてきました。一方、仕事を受注できるリーダーがいれば、そこに集団をつくるということも増えるかもしれません。

――麻酔科医が病院経営に与える影響はますます大きくなると思いますが、いかがでしょうか。

   病院における麻酔科医の重要度は大きくなっています。経営とリスク管理のキーパーソンが麻酔科医だと言えます。病院の収入で、オペ室の稼働はキーワードですね。平均在院日数をコントロールすることもできます。それによって収益大改善に至った大学病院があり、数字が物語っています。
   しかし、それはあくまで、麻酔科医体制が整備されてということが前提となります。麻酔科医の業務量の適正数値というのは、まだ確立されているとは言い難いのが実情です。学会は、適正な症例数を300~400例としていますが、臨床以外に研究(論文)や教育指導を加味した数字だといえるので、麻酔科医全体に適用できるかわかりません。
   病院としては、症例バランスを見極めた麻酔科医体制をつくっていくことが必要でしょう。私は病院の経営者の方々に話すのですが、予定手術と緊急手術のバランスをとらえてくださいと。全て予定手術であれば、麻酔科医は予定に合わせることができますから、そこに見合った人数配置(指導医、専門医、研修医、非常勤医)をすればいいですが、緊急手術の多いところでは、それと同じ体制では、麻酔科医は疲弊してしまうことは自明の理でしょう。
   今後、麻酔科医は増えていくと思われます。オンとオフが比較的はっきりしている科目ですし、女性医師の進出には適していると言えます。麻酔科医には、仕事、拘束時間、人間関係、それらに対する正当な評価(お金)、業務バランスをしっかり認識していってほしいと思います。病院に対しては、オペ室は経営のポイントの一つなので、バランスのとれた麻酔科医体制をしっかりつくることを望みたいですね。

――ありがとうございました。

勝又氏の著書『医療崩壊の真実』(アスキー新書)にさらに詳細が書かれていますので、ご一読ください。 11月14日が、今年から「医師に感謝する日」として認定されました。
【動画】11月14日「医師に感謝する日」、仕掛け人である勝又氏が語ります。

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