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アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが提唱したメラビアンの法則によると、コミュニケーションにおける印象を決めるのは、表情やしぐさ、視線といった非言語要素(ノンバーバル)が55%、声の質、口調、テンポといった言語要素(バーバル)が38%、そして残りの7%が言葉そのままの意味・内容といった言語情報で決まると言います。言い換えてみると、視覚的なものが55%、聴覚的なものが45%ですから、目から入る情報はとても大切だということがわかります。 コミュニケーションをとるわけですから、もちろん言語要素はとても重要です。しかし、どんなに相手が雄弁に語ったとしても、聴き手である自分と目を合わさずに下を向いて話をしていたら、真剣に相手の言うことを聴く気が起こりません。私たちが相手に自分の真意をわかってもらいたいときには、前記のようなことを踏まえて、言葉だけでなく相手の共感を得るような行動を示すことによって、コミュニケーションをスムーズにとっていきたいものです。 私が実践していることをいくつかご紹介しましょう。今や重要なコミュニケーションツールとなったメールは、私も教室員や研修医たちとやりとりしています。しかし、メールでのやりとりは、情報交換にのみ使うようにしています。どうしても急ぎで質問の答えがほしいときには、私の考えていることがしっかりと伝わるように、論旨をはっきり書くように心がけています。曖昧なニュアンスだと、返事を書くほうはとても困ってしまいます。しかも上司と部下という上下関係ですので、「先ほどの質問についてもう少し詳しく」などと返信するのも躊躇してしまって、なかなかできないものです。 しかしメールには、相手の表情や声のニュアンスもわかりづらいという短所もあります。友人関係でしたら絵文字などで気持ちを表現したりもできますが、上司と部下という関係では難しいでしょう。また、YES、NOでしか答えられないクローズドクエスチョンも、あまり好ましくありません。部下は上司からの質問にNOと書きづらいものですし、それに対するフォローも時間差でしか行えません。コーチングの観点から見ると、メールには少し危険な側面があるといえるのかもしれません。メールでは、用件のみにしないで、答えを求めない他の話題を少し入れるのも、文を柔らかくする効果があります。 赴任先にいる教室員とのコミュニケーションの方法ですが、距離が離れているのでなかなか会えません。前項で述べたように、私はメールを情報交換のみでしか使っていないので、赴任先の教室員とのコミュニケーションツールは、電話になります。電話で話すときは、顔が見えない分、声のトーンを工夫して、教室員に不安を残させないよう、また何でもフランクに話せるように気をつけているつもりです。まずは明るい感じでたわいない世間話をして、相手が今どんな状態なのかを観察します。そして徐々に相手の声のトーンに合わせた話し方に変えていきます。もし、相手がうれしそうに話していたらこちらも似たような話し方をし、逆にボソボソと話していたら、こちらもボソボソと話をします。 この方法は、チューニング(日本語訳・同調)というスキルです。チューニングには、ペーシング(相手のテンポに合わせる)とミラーリング(相手のしぐさを鏡のように真似る)という2つのスキルがあります。このスキルには、共感してもらえていると相手に感じてもらえる効果があります。親しい間柄ですと自然とできているものですが、上司と部下という関係なら試してみる価値はあるでしょう。 私は基本的にペーシングを使います。声のトーンを合わせたり、「うんうん」「なるほど・・・」とうなずいたりすることで、私は聴いていますよというメッセージを送ることができます。上下関係の会話で、呼吸が合わず一方的な会話では相手に大きな不安を残し、また、逆に、呼吸が合った会話の後では、なんらかの満足感が残ります。 最後は、相手と顔を合わせて話をする場合を考えてみましょう。たとえば、学生が教授に相談やお願いに来るというシチュエーションがあるとします。私も学生時代そうだったように、今の学生にとっても教授と二人きりの状態で相談やお願いをするというのは、かなりハードルが高く感じられるようです。そこですかさず教授から「何か用か?」と威圧的に聞かれたら、言いたいことも言えなくなってしまうでしょう。心の準備をして教授のところへ来たのですから、考えていることを100%言わせてあげる雰囲気づくりは大切です。 私はまず「どないしん?」と関西弁で声をかけ、その場の緊張をほぐします。表情は口を一文字にせず、少し開いた状態で話を聴くようにし、相手との距離は50cmぐらいで保ちます。話す角度は前に述べたように90度にし、決して正面で向き合うことのないようにします。もし相手が話しづらそうな表情を見せたら頭を傾け、必要に応じた距離を縮めます。相手との距離を縮めるのには、積極的な印象を相手に与える効果があるのです。 また、相手が言いたいことを言うだけで終わらせず、私自身のことも話すようにしていいます。たとえば学生に対しては、自分の学生時代のこと、教室員に対しては、「最近、日本の麻酔科にこういう問題があるんだ」とか「最近、私がいろいろな仕事が重なって忙しすぎるけど、みんなはどう思っているかを聞かせてよ」などと、こちらからのフィードバックを試みたりもしています。なにも意気込んでこなくても教授と話ができるんだと思わせることが必要なのです。ハードルの低さを演出するのも大切なことです。 余談ですが、私は長いこと話をしていると、声が小さくなっていく癖があるみたいです。気がつくとささやき声になっている。相手は話を聴きもらさないように、顔を寄せてきます。聴きもらさないようにすると同時に心の窓も開いているような気がします。これもまた、良好なコミュニケーションを保つ有効な手段の一つと言えるかもしれません。 | |
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▼ 「第1回 7つのお約束と10のスキル」 ▼ 「第2回 コーチングをマネジメントに活用しよう」 ▼ 「第3回 理想的な環境をつくる」 ▼ 「第4回 聞く? 聴く? 訊く?」 ▼ 「第5回 目標の明確化から達成感まで」 ▼ 「第6回 コミュニケーションは人間関係構築の柱」 ▼ 「第7回 良好なコミットメント」 ▼ 「第8回 「迷い」に対するアプローチ」 ▼ 「第9回 相手の共感を得る行動」 ▼ 「第10回 プライド -学生編-」 ▼ 「第11回 プライド -指導者編-」 ▼ 「第12回 他者満足」 ▼ 「第13回 展望」 |








