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第10回 プライド-学生編-
今回のスキル  【プライド -学生編-】
              小さいプライドは思い切り捨てよう
              相談する相手は自分よりできる人に
コミュニケーション不足とプライドの壁

   一般的に、強い意思とたゆまぬ努力(と、それなりの頭脳)があれば、一流といわれる大学に入ることは不可能なことではないでしょう。しかし社会で通用するためには、自分の決意と努力だけではなかなか難しいものがあります。そこには、良好な人間関係を築くためのコミュニケーション能力が必要になってきます。

   製薬会社で働いている方とお会いしたときに「最近の新入社員はすぐ辞めてしまう」という話を聞きました。話を進めていくうちに、辞めていく人の共通点を見つけることができました。「人に聞かない・聞けない」というコミュニケーション不足とプライドの壁というものです。

   組織の一員として働き始めて、自分では処理できない問題が出てきた場合に、素直に「私、これのやり方がわからないんです」とか「教えてください」ということが言えない人が増えているみたいです。他人に聞いたり、教わったりすることによって、問題の処理方法が見つかることが多々あるのに、そういったコミュニケーションすらとれない人がいるのが現実のようです。私はそのときにプライドの壁について、新入社員をスキーの初心者にたとえてお話をさせてもらいました。

   「スキー初心者はこけたら怖い、恥ずかしいという持ちが強いものです。でも、初めてなのだからこけて当然、こけるもんだと考えるべきです。ゲレンデを見ると、多くの人がこけています。しかし、誰もそれを嘲笑したりしません」

必要以上に背伸びをしない

   もちろん、私の職場でも同じことが言えます。上司と部下という関係ですから、教室員や研修医は教授に対してマイナスを恐れ、自分が思っていることを素直に言わない傾向にあるようです。過去の経験に沿った、当たり障りのない意見を述べることで、大きく評価はされなくても、自分が傷つくことや恥をかくことを避けられると思っている人が多いようです。

   たとえばカンファレンスのときに、「私はそれを知りません」と言えない教室員がいます。聞くは一時の恥というように、聞けばすむことを聞けないということは問題です。私はそういった自己防衛的な小さなプライドを持った教室員に対して、「今知らないということは全然恥ずかしいことではないよ。でも、これを2年後に知らないということは恥ずかしいことになるかもしれないよ」といったアドバイスをしています。

   もちろんカンファレンスでは発言しやすい雰囲気づくりになるように工夫しています。たとえば教授(リーダー)は、(1)司会をしないこと、(2)発言は最後にすること、(3)途中で絶対に口をはさまないこと、(4)部下がした発言に対してネガティブな評価を控えること、等々です。

   それに加えて、相手に対して質問や教えを乞うときには、中途半端な言い訳をしないこと、自分を飾ろうとしないことも教えています。なぜなら、少しでも知ったかぶりをすることによって、相手は教えることに躊躇してしまうことがありますし、どこまで教えらたいいのかもわからないので、核心に近づけない場合がありるからです。

   みんなの前で恥をかきたくないという気持ちだけではなく、1対1のシーンでも「先生、ここまでの研究でこういう結果が出たんですけれども、次はどうしたらいいですか?」とか、「アドバイスをください」ということが言えない人がいます。相談することによって、先生から反対に質問をされて、自分がモノを知らないということがバレるのが怖いと考えているようです。私は「バレてもいいじゃないか。その質問をすることでキミの研究がAクラスのものになるか、Cクラスのものになるかが決まるんだよ」といったアプローチをします。

プライドのハードルを低く設定

   人は誰しも認めてもらいたいという欲求があります。とかく自分をネガティブに評価するようなフィードバックは避けたいと思いがちです。そんなとき私は、「相談をするときには必ず自分よりできる人に聞くこと」「相手が同意してくれるような質問だけをしない」といったアドバイスをします。恥をかきたくないからと、都合のよい意見だけしか聞かないのでは、自分自身のスキルアップにつながらないからです。

   恥をかきたくないと、小さなプライドを捨てられない人たちは、すべて自分の能力の範囲で自己管理しなくてはなりません。自分が出した答えがその組織のなかや社会のなかで適応できうる答えなのか、とくこともわからないまま進んでいかなくてはならないのです。

   ハードルを低く設定することで跳べる人が多くなるのと同じく、プライドのハードルを低く設定することで、他人からの情報量を多く確保し、プラスアルファの能力を他人から吸収していく。それが自分自身のスキルアップにつながるのです。短いスパンでなく、10年、20年という長いスパンで考えると、他人からの情報は大きな財産となります。

   次回は、リーダーという立場から見たプライド -指導者編-についてお話をしたいと思っています。
▼ 「第1回 7つのお約束と10のスキル」
▼ 「第2回 コーチングをマネジメントに活用しよう」
▼ 「第3回 理想的な環境をつくる」
▼ 「第4回 聞く? 聴く? 訊く?」
▼ 「第5回 目標の明確化から達成感まで」
▼ 「第6回 コミュニケーションは人間関係構築の柱」
▼ 「第7回 良好なコミットメント」
▼ 「第8回 「迷い」に対するアプローチ」
▼ 「第9回 相手の共感を得る行動」
▼ 「第10回 プライド -学生編-」
▼ 「第11回 プライド -指導者編-」
▼ 「第12回 他者満足」
▼ 「第13回 展望」
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