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この連載を終えるにあたり、再び医療現場におけるコーチングとは何か、これからの医療界のあり方について私なりの見解を述べてみたいと思います。 メディカルマネジメント・コーチングを簡単に説明すると、病院の責任者や上司が、部下の指導・育成のために行う対話型のプロセスのことです。 この相互の関わりのなかで、個人が持つ潜在能力を最大限に引き出し、目標に対してのアクション、問題解決などの手助けを目的としたコミュニケーションのことを指します。 医療界ではまだまだコーチングが浸透していないように感じられます。 一般企業とは違い病院の医師は、開業や独立など、みなが同じ方向性に進む世界ではありません。 プロフェッショナルな人たちの集団です。さまざまな個性を尊重しながら、できる限り同じ方向にベクトルを向けなくてはなりません。 その個性集団をまとめていかなければならない医療界にこそ、コーチングというスキルが必要になってくると私は考えています。 従来の組織は上司からの一方的な指示や命令で成り立っているという部分がありました。 しかし、今は変化の激しい社会です。誰もが多様な生き方や選択肢を持ち、答えを待っているよりも自分たちで考え始めています。そのため、上司からの一方的な命令が通用しなくなってきているようです。 たとえば、今までの生産界では"モノをつくれば売れる"、医療界では"医療は授けるもの"、教育界では"先生のルールに従え"という一方向的ペースでやっていても、情報が少なかったこともあり、そのスタンスで通用してきた時代でもありました。 しかし情報化社会となった今では、モノをつくっても売れない、医療不信、学級崩壊などさまざまな問題が浮き彫りになってきています。これからは消費者本位、患者本位、生徒本位のテーラーメイドな対応をとる必要性があるのではないでしょうか。 ダイエーの創業者である中内さんが辞任されるとき、「もはや"消費者"をひとくくりにできなくなった。みな顔と名前を持ってしまった。 一人ひとりの個人となった」といった感じのことをおっしゃられました。 この"消費者"を"患者"という言葉に置き換えて考えたサービスを医療界でも提供していかなくては、今後の潮流に乗り遅れるのではないでしょうか。 病院という組織は中小企業の良い部分を持っていると思います。大企業では職員全員の顔が見えるということはありませんが、中小企業においては、自分の部下たちの顔が見えるぐらいの距離感だと思います。 病院もその距離感だからこそ、トップが「患者さん本位」の対応を打ち出せば、そのサービスが浸透するスピードもかなりのものになるでしょう。 これからの医療界は変わり身の早さが問われそうです。 2006年8月に立ち上がった「臨床コーチング研究会」(http://rinsho-coach.net/mt/public/hp/)のことについて少しお話したいと思います。 さきほど述べたように、時代は変化してきています。しかし医師は、従来の構造のなかで、なかなか自分たちのやっていることの変化を望まない人が多いように感じます。 そして医師よりは、コメディカルたちのほうが早くそれに目覚めてきているようです。 そういう意味では新しいことを受け入れる姿勢や、医療事故防止の取り組みにしても、一番遅れているのは医師であるように思います。改革で最も障害となるのは"ベテラン"と"権力者"かもしれません。 医療事故の例一つとってみても、トップはすぐにマニュアルをつくろうとします。 しかし、そのマニュアルをトップが考えてつくっても、魂が入っていないように感じられます。 事故は現場で起こっているのだから、まずは現場で話し合うべきだと思うのです。 医師同士がいくら話し合っても出ない答えやなくならない問題は、現場で働く人たち(医師・看護師・薬剤師・コメディカルなど)のなかに、答えがあると考えなければいけないでしょう。 問題は医師同士、あるいは看護師同士ではなく、医師と看護師、またはコメディカルの異職種間にあると思われます。この異職種間のコミュニケーションをつくることが重要です。 研究会への参加対象者は、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、理学療法士、栄養士、医学教育関連などの専門職に限定しています。 現場に答えがあるという立場に立って、お互いの情報交換を活発に行うことにより、医療とコーチングの融合を目指していきたいと考えています。 日本の医療現場では、まだチーム医療という形をうまく実現しているところは少ないと思っています。 医師と患者、看護師と患者、外科と内科、放射線科と内科という横の関係はつくっているけれども、紹介・命令・指令という形で動いているだけで、会話を通じた双方向の関係はつくられていません。 これは日本の医療界の一番の欠点で、双方向性がないということはチーム医療ではなく、単なる指示・命令が動いているだけなのです。 チームのコミュニケーションは、医師・看護師において提供する技術を除けばすべてはコミュニケーションで成り立っています。 これからの時代には単なる一方向性のコミュニケーションではなく、双方向性のコミュニケーションをつくるということが重要なキーワードになると思います。 時代はどんどん変わっていきます。その時代の流れに対応していくには自分も変わらなくてはいけません。何が自分を変えられるのでしょうか? 私は一つは謙虚さだと思っています。 謙虚さがあれば必ず物事をフィードバックすることによって、微調整を加え、自分を変化させ、時代に対応できる人間になることができるでしょう。 もう一つは、自分を強くすることです。強さとは傲慢さを見せることではありません。また、命令することでもありません。問題点をフィードバックするという能力なのです。 | |
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▼ 「第1回 7つのお約束と10のスキル」 ▼ 「第2回 コーチングをマネジメントに活用しよう」 ▼ 「第3回 理想的な環境をつくる」 ▼ 「第4回 聞く? 聴く? 訊く?」 ▼ 「第5回 目標の明確化から達成感まで」 ▼ 「第6回 コミュニケーションは人間関係構築の柱」 ▼ 「第7回 良好なコミットメント」 ▼ 「第8回 「迷い」に対するアプローチ」 ▼ 「第9回 相手の共感を得る行動」 ▼ 「第10回 プライド -学生編-」 ▼ 「第11回 プライド -指導者編-」 ▼ 「第12回 他者満足」 ▼ 「第13回 展望」 |









